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末期がんだった北海道帯広市の大淵美和子さん(当時78)に死が迫ったのは、新型コロナウイルスの緊急事態宣言が出ていた今年4月末のことだった。「奇跡」は、そのとき起きた。 昨年9月、地元病院の男性医師が告げた。 「年で抗がん剤も打てないし、入院しても寝ているだけ。どうしようもなくなったら緩和ケアにでも入ったら」
末期の胃がん。「あと1、2カ月。今年は越せない」。冷たい言葉の響きだけが、付き添った長女(47)の耳に残っている。 その日から、美和子さんはシーツすら敷けぬまま倒れ込んだベッドから起き上がれなくなった。 チェロが趣味で、日常に花や芸術を添えて、生活を少しだけ美しく、豊かにする喜びを教えてくれた母。病床の母の目は、まるで人とは思えないほど真っ黒に見えた。
何日かして、前触れもなく、寝室から叫び声がした。 「どうしても、もう少し生きたい」 美和子さんの医者への不信感… この記事は有料記事です。残り1333文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません