「スガ案件」→総務官僚に別格意識? 泥沼化の接待問題


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 放送事業会社の東北新社とNTTによる総務省幹部への接待問題が「泥沼」の様相を見せている。官僚は相次いで更迭され、疑惑は政治家にも広がる。なぜ同省ばかりで表面化しているのか。かつて同省で働いた経験があり、内部事情を知る2人にその背景について尋ねた。 ■片山善博さん「最近の官僚、会食慣れしている」  ――今回の事態をどう見ていますか。  


「私が総務相だった10年前までは、どの官庁も接待は厳に自重する雰囲気がありました。それは1998年に東京地検特捜部に摘発された旧大蔵省の接待汚職の記憶が生々しかったからです。しかし、この10年で状況が変わったなという印象です」  ――何が変わったのですか。  


「一つは、霞が関で『官邸主導』が強まったことです。従来は政策の多くは各省庁から出てきていましたが、安倍政権以来、官邸から省庁に下りてくる習わしです。菅義偉首相が官房長官時代から掲げていた携帯電話料金の値下げは、その典型でしょう。安倍政権時代の官邸は経済産業省出身の官僚が牛耳っていましたが、携帯料金値下げなどは総務官僚が動かなければ進みません。そこで、こうした『菅案件』では総務官僚のポジションが上がり、別格意識を持つに至った可能性はあります」


 ――情報通信分野の成長で、旧郵政省系官僚の地位が上がったとの指摘もあります。  


「それは有り得ることです。10年前の総務省で、旧郵政系の官僚たちに肩で風を切って歩くようなタイプは見当たりませんでした。旧自治省系の官僚がパワフルだったのに比べ、やや地味なところもあった。ところが、急速な情報通信技術の発達や電波需要の増大に対応して、関係業界を所管する旧郵政系の部局が一躍注目されるようになった。会食などを通じ、チヤホヤするような人も周りに現れたのでしょう」  


――2001年の省庁再編で旧自治省、旧郵政省、旧総務庁が統合して巨大官庁になったことも影響していますか。  「直接の原因とは言えないまでも、あの省庁再編には無理があったことが背景にはあると思います。3省庁の統合であまりに巨大な役所になってしまい、たとえ大臣が優秀だとしても、監督の目が届きにくく、ガバナンスが利きにくい組織になっていることは確かです」  


「組織管理上、役所の中では官僚たちが組織のミッションや意義を共有できることが重要です。ところが総務省の場合、旧郵政系は情報通信・放送分野の行政を担う一方、旧自治系は地方自治を、旧総務系は行政の透明性や効率性の確保などを担っています。旧自治系と旧総務系はともかく、旧郵政系との間には必ずしも事務分野の共通性がない。事務次官などの上層部も自分の出身省庁以外の分野は掌握しにくく、一つの組織としての統一性や整合性に欠ける嫌いがあります」