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九州最南端の鹿児島県南大隅町で、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場誘致をめぐり再び論争が起きている。13日告示の町長選で、いったんは沈静化した誘致論を掲げる新顔が名乗りを上げ、反対する町民の声を受けた立候補予定者が強く反発。選挙戦の争点に浮上している。
町長選は当初、いずれも新顔で誘致に否定的な、元町総務課長の石畑博氏(65)と前町議の水谷俊一氏(61)の一騎打ちになると見られていた。ところが、今年1月末に衆院議員秘書(2月に退職)で福岡県出身の田中慧氏(38)が、町内の誘致派から後押しを受ける形で立候補に動き始めると空気は一変した。
南大隅町では2007年、当時の税所(さいしょ)篤朗町長(故人)が人口減対策として誘致を検討する姿勢を示したが、鹿児島県の反対を受けて撤回。12年に放射性物質の受け入れや原子力施設の立地を拒否する条例が町議会で可決された。 その後、森田俊彦現町長が09年の初当選直後、誘致を勧める町外の人物に交渉を一任する「委任状」を書いていたことが発覚するなど、町は長年誘致問題に揺れてきた。
人口はこの間、減少の一途をたどり、直近10年で約26%減の6719人(4月現在)に。高齢化率も49%まで上がった。
誘致派の建設業者などが推す田中氏は立候補を表明した3月の記者会見で、「誘致しなければ、町は過疎・高齢化で30、40年後は持たない。原子力関連施設の誘致で町の持続的な発展をめざす」と主張。町内で配るチラシには、処分場選定の第1段階に当たる「文献調査」の受け入れに伴う年最大10億円の交付金を原資に町民1人に30万円の商品券を配ると公約する。
これに対し、水谷氏は「町の自然を守る。施設は誘致させない」と反発し、反対派の町民が後押しする。町職員OBらが支援する石畑氏も「町民の多くは誘致を望んでいない」と訴え、反対姿勢を鮮明にしている。 高レベル放射性廃棄物の最終処分場問題とは
原子力発電環境整備機構(NUMO)が2002年から、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の候補となる自治体を公募。07年に高知県東洋町が応募したが、住民の反対で撤回。処分場選定が難航する中、経済産業省は17年、適地の可能性がある場所を示す「科学的特性マップ」を初めて公表した。昨年10月、北海道寿都(すっつ)町が処分場選定の第1段階にあたる「文献調査」に応募、北海道神恵内(かもえない)村も国の調査申し入れを受け入れた。翌月、この2町村で国内初の文献調査が始まった。